2013年度第4回研究会

2013.10.9 () 16:30-18:00協生館4F 階段教室3 (予定)

システミック・リスクに関する研究動向

生天目 章(防衛大学校)

 

講演概要

 2008年のリーマンショックを頂点としたグローバルな金融危機の特徴は,一部の金融機関の債務超過から発生した小さな危機が金融市場全体へ波及するという点にある。そして、金融機関の個別的なリスクではなく、金融市場全体にリスクが伝播していくメカニズムを明らかにしながら、金融市場全体の脆弱性や安定性に関するシステミック・リスクという研究が急速に進んでいる。システミック・リスクは,一部の金融機関の債務超過から発生した小さな危機が増幅されながら金融市場全体へ波及するという形態をとる。ひとたびシステミック・リスクが発生すると,金融と実体経済のフィードバック・メカニズムを通じて,実体経済にも悪影響を及ぼす。

 

 すべての金融機関は,大規模で複雑なネットワークを形成しているが,複雑ネットーワの解析手法により、金融ネットワーク構造が明らかになりつつある。また、モデリング・シミュレーションの手法により、結合された金融機関のバランスシートのネットワーク上をリスクがどのように伝播し、また吸収されていくのかなどのメカニズムなどが明らかになりつつある。本報告では,システミック・リスクに関する研究動向について解説しながら、多くの金融ネットワークに共通する中核ー周辺構造の脆弱性や安定性の評価、そして一部の公開されたデータから金融ネットワーク全体を復元する方法などについて報告する。 

 


日本金融・証券計量・工学学会

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