2014年度第2回研究会

2014.9.11() 18:00-19:30協生館4F 階段教室4

尤度比検定に基づく時系列分割法を用いた国内株式価格の網羅的分析

佐藤 彰洋 (京都大学)

 

講演概要

  東京証券取引所で取引される証券の日次データを用いた網羅的な分析の結果について報告する。この研究では有限正規分布混合モデルの仮定のもと、非定常時系列を局所定常時系列の結合であるとみなし尤度比検定に基づく時系列分割法を再帰的に適用しつつ、各セグメントの平均値と分散値とを求める方法を提案する。更に、分割されたセグメントを分散の小さい順に5つのカテゴリーに分類し、各観測日次中の5つのカテゴリーそれぞれに含まれる証券数を計算することにより、ボラティリティに基づき市場状態を定量化する方法について考察する。過去10年間同じ社名で取引が続いている1416銘柄について提案法を適用し、過去10年間に渡る東京証券取引所上場銘柄についての実証分析をおこなった。分析の結果、ボラティリティの小さい銘柄が多い期間は市場指数が上昇傾向にあり、市場全体で安定的に価格が推移している期間と対応していることが分かった。他方、ボラティリティが大きい銘柄が市場全体を占める期間は市場全体で証券価格が下降傾向にあり、市場が不安定化している期間と対応していることが確認された。これはレバレッジ効果として知られる価格上昇時にボラティリティが低下し、価格下降時にはボラティリティが上昇する効果と整合的である。本提案手法を用いることにより2008年に発生したリーマンショック前後においてボラティリティの高い銘柄が証券市場全体で増えていく様子を定量的に計ることができた他、2011年3月の東日本大震災直後においてボラティリティの大きな証券の数が急激に上昇していたことが確認された。

 

参考文献

Aki-Hiro Sato, “A Comprehensive Analysis of Time Series Segmentation on Japanese Stock Prices”, Procedia Computer Science, Vol. 24 (2013) 307-314

 


日本金融・証券計量・工学学会

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