小林喜一郎教授 講義内容


  • 総合経営

 本コースでは、企業の経営政策・戦略(BPS : Business Policy and Strategy)上の諸課題について、企業として好業績(Above average return)を達成していくためには何をしなくてはならないのかという前提のもと、トップ・マネジメントの視点に立って戦略的な企業経営のロジックを学習し、状況分析に基づいて具体的な戦略立案並びに実行を指揮するための訓練を行うことにその狙いがある。
21世紀を迎えて企業を取り巻く競争環境も大きく変化している。ITの進展・普及、規制緩和、プレマーケット競争、業界垣根の崩壊、ナレッジを中心とした社会への転換、といった変化は、新しい業界の定義、競争ルールの構築、という課題を企業経営にもたらしている。その意味では、時代の変革期にあっていかにして業界構造並びに企業の競争優位性を構築していくかを考えるコースでもある。

以上をカバーするケースの内容として、下記の内容を扱う。

1)コーポレートレベル戦略および事業レベル戦略
・企業の経営理念と経営者の役割
・事業ミッションとドメイン定義
・企業外部環境と内部資源分析(含むSWOT)
・グローバル戦略
・コア・コンピタンスと経営資源蓄積・調達・育成
・資源配分戦略
・組織と戦略の整合性
・戦略策定における定量的分析多角化の類型と方法論
・産業組織論的分析視覚に立った業界構造分析の基本(5つの競争要因分析、国の競争優位)
・業界構造に対応した基本戦略(差別化、コスト、フォーカス他)
・業界の収益性を規定する要因の分析(参入・撤退障壁、移動障壁と戦略グループ)
・事業レベルでの競争戦略
・戦略の実行上の課題(Implementation)等

2)イシューオリエンテッドなテーマ
・ネット経済下での競争戦略
・ITの産業へのインパクトとバリューチェーンへの影響
・バイオテクノロジー
・コーポレートガバナンス等

3)対象となる組織形態
・大企業とベンチャービジネス
・NPO・NGO
・製造業、サービス業


  • 競争戦略論

 企業は様々な局面で競争戦略を展開している。特に近年ではその競争構造が複雑化し、企業対企業というレベルではとても競争実態を把握することが難しくなってきた。
例えばある事業では激しく競争しながら、他方では連携するというような錯綜した現象も見られるようになってきた。このことは業界あるいは戦略の分析単位の再考、という新しい課題をもたらしている。そこで本コースでは企業戦略・競争戦略に関する理論を学ぶことによってその理解を深め、より有効な戦略策定・実行を行うためのポイントを把握することをその目的とする。

具体的には以下の切り口をもとに、戦略に関する書籍・論文輪読、講義、ケースディスカッション、授業内講演、を行う。

1)経営戦略・競争戦略とは何か
2)企業レベルの戦略と事業レベルの戦略
3)多角化と競争
4)経営資源と競争
5)イノベーションのマネジメント
6)戦略ドメインの設定方法



  • 戦略コンサルティング

 戦略コンサルティング会社のリーダー的存在であるボストン・コンサルティング・グループより講師を招聘し、コンサルティング現場の実例に基づいた講義を行う。これによって経営の今日的課題を理解し、同時にコンサルティングの手法・アプローチ・頭の使い方を学ぶ。
主たるテーマとして、以下の内容を扱う。

1)戦略コンサルティングの概要
2)バリューポートフォリオマネジメント
3)R&D 戦略
4)マーケティング・営業戦略
5)デコンストラクション戦略
6)eビジネス戦略
7)企業のITの戦略
8)コーポレートガバナンス
9)BCG コンセプト
10) その他



  • 経営政策特殊講義

 21世紀を迎え、企業経営を取り巻く環境は大きく変化しており、この急速な変化が実務ならびにアカデミックな世界で今迄通用してきた方法やものの考え方をゆるがし始めている。例えばコア・コンピタンスをめぐる競争、あるいはデファクト・スタンダードをめぐる競争が激しさを増す中、業界や戦略の分析単位は、今迄通りのままで良いのか、という疑問が出てきている。戦略とは単に製品レベル、事業レベルのみの概念ではなく、企業の持つ経営資源、あるいは企業連合という新しい単位で考えていく必要があるものと考えられる。そして従来の発想の枠を超えた新しい視点での戦略構築が求められる時代になっている。
研究テーマとしては、トップ・マネジメントの役割、バリューチェイン変革、戦略ドメインと経営成果、競争戦略、コア能力、多角化戦略、デファクト・スタンダード、アライアンス、MOT、アントルプレナーシップ、ナレッジと学習のマネジメントなど様々な切り口が挙げられるが、そのどれを取りあげるかについては受講者と相談し調整する。

全体の1/2を理論文献研究、残りの1/2を受講者の取り上げたテーマについて実証研究に基づく論文の作成にあてる予定である。なお研究論文については理論的な面からのユニークさ・卓越性は勿論のこと、ビジネス・スクールにおける修士論文として、実務者に示唆を与えられるような内容も併せ持つことを求める。